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最近の映画事情[バットマン リターンズ]

さて前回に引き続き旧バットマンです。1992年公開。
ティム・バートン監督、マイケル・キートン主演。
最近の映画事情[バットマン リターンズ]_c0135432_15133462.jpgクリスマスを間近に控えたゴッサム・シティ。しかし華やかな街の裏側にはサーカス・ギャングがうろつき、謎のペンギン男の目撃談が後を絶たない不安定な生活があった。サーカス・ギャングの首魁であるオズワルド・コブルポット/ペンギン(ダニー・デヴィート)は、畸形ゆえに両親に捨てられた過去と決別するため、実業家マックス・シュレック(クリストファー・ウォーケン)を誘拐、シュレックの協力を取り付けると自作自演で自分をヒーローに仕立てていく。
一方そのシュレックはゴッサムの発電所の一新を謳いつつ、裏では電力供給という街の生命線を自分の手に握ろうとしていた。シュレックの内気な秘書、セリーナ・カイル(ミシェル・ファイファー)はその計画に気づき、シュレックの手でビルから突き落とされてしまう。しかし猫の魔力で蘇った彼女はこれまでの抑圧された生活を捨て、自由を手に入れるためキャットウーマンとして街に現れるようになる。
ペンギンの自作自演に気づいたゴッサムの守護者バットマンことブルース・ウェイン(マイケル・キートン)は、市長選に立候補しようとするペンギンを失墜させるべく奔走する。しかしそんなバットマンを自分の「自由」の敵とみなしたキャットウーマンはペンギンと協力関係を結び、バットマンをゴッサムから追放すべく暗躍し始めるのだった……。



こんな感じのストーリー。

前作同様、というより前作以上に悪役が光る今作。バットマンが物語の進行役として主題から外されている感も否めないが、存在感がないというわけではないので十分な役どころ。

メインとなるのは名家の生まれながら奇形児ゆえに生まれてすぐに両親に捨てられた男、ペンギンの悲劇。
悪役が光っている作品は得てして面白いというのは昔から言われることだが、前作でジャック・ニコルソンが演じたジョーカーに並び、ダニー・デヴィート演じるペンギンは非常に濃い悪役として印象に残る。
シルクハットをかぶったこの短身の怪人は、原作のコミックスでもそうだがバットマンシリーズにおいては珍しいタイプの悪役。バットマンに登場するヴィランは、ジョーカー然り、リドラー然り、トゥー・フェイス然り、その他ザズーやハーレィ、スケアクロウらにも表れているように狂気や強迫観念に駆られた者が多い。その意味で、過去との決別、あるいは復讐を胸に行動するペンギンはシリーズ中珍しいタイプの悪役だ。

ダニー・デヴィートをペンギン役に推したのは前作で宿敵ジョーカーを熱演したジャック・ニコルソンだという。二人は「カッコーの巣の上で」で共演して以来の親友だというが、その「カッコーの巣の上で」でデヴィートが演じた役柄からは今回のペンギンという悪役は想像もつかない。
「カッコー」でデヴィートが演じたマティーニは温厚で優しいがやや愚鈍なきらいがあり、空気を読めない気弱な男。それが今回の「バットマン」では自分を捨てた世の中に自分を認めさせようと野望に燃える醜悪な外見の怪人である。必ずしも成功するものではないが知恵もまわり狡猾で、他者を踏み台にすることを厭わない、そんな役だ。

その役を見事にこなしているデヴィートと、そのペンギンというキャラクターが常に感じさせる哀愁、寂寥感、悲哀。そういった脚本の良さも相まって、非常に感情移入できる悪役としてペンギンが印象に残った。

反面キャットウーマンはやや扱いが難しい。
恐らく自由を渇望し、犯罪も厭わなくなったセリーナ・カイルにとって邪魔な存在だったバットマンを消すためにペンギンと結託した、ということなのだろうが今回の脚本におけるその必要性にはやや疑問が残る。
ヒロインが必要、というある意味やむにやまれぬ事情もあったのだろうが、彼女がいなくともペンギンとバットマンの争いはいずれ激化したであろうことを考えれば悪役として登場させたことに意味があったかは微妙だ。

ただ必要性という言葉を外せば、ミシェル・ファイファーはこの二面性のある役を非常にうまく作っていたと思う。前半の冴えない女秘書セリーナ・カイル、中盤の悪女キャットウーマン、そして終盤の悲劇を背負ったキャットウーマン/セリーナ・カイルという三段階の変化を緩急見事に演じている。
この役がもう少し必要性のある、あるいは重要度の高いキャラクターであればもう少し綺麗に印象に残ったのだろうが、どうしても若干のオマケ臭さが拭えない役どころとなってしまったのが残念。

キャットウーマンの物語的な意味のなさを考えるに、もう少しペンギンという悪役の描写に時間を割いてその狡猾さを見せて欲しかった、という物足りなさは残るが、それでもデヴィートのペンギンの強烈な存在感がこの映画の面白さに直結していることは言うまでもない。
醜悪で無様で、同情に値しない悪党であるにも関わらずその背中に悲哀を見ずにはいられない、そんな見事な「ペンギン」を見るだけでも、この映画を見る価値は十分にあると思う。
# by DLMN | 2013-10-13 16:01 | 映画

最近の読書事情[ヴァンパイア・サマータイム]

読書感想文です。映画に引き続いてこっちも始めてみましたw
今回は石川博品著、ヴァンパイア・サマータイム(ファミ通文庫)です。

最近の読書事情[ヴァンパイア・サマータイム]_c0135432_1632326.jpg山森頼雅は、毎日夕方になると両親の営むコンビニの手伝いに出る。ドリンクの品出しのためにバックヤードに引っ込んでいると、いつも彼女は現れる。悩んだ末にいつも同じ紅茶を買っていく「吸血鬼」の少女。彼女の顔をドリンクの棚越しに見つめるのが頼雅の数少ない楽しみだった。
吸血鬼なんて、別に特別でもなんでもない。この世界の人口の半分は吸血鬼で一日の半分は昼の人間、もう半分は夜の吸血鬼のものだ。学校も昼と夜にわかれていて、同じ学校に通うその少女と学校で顔を合わせることはない。
ある日、友人との寄り道で帰宅が遅くなった頼雅は吸血鬼たちの通学に遭遇する。そこで偶然にもあの少女、冴原綾萌と知り合い、二人は惹かれていく。けれど昼と夜を住み分ける二人は、互いにすれ違ったり、遠慮したり、勘違いしたり。自分の想いに向き合ったとき、二人の世界は重っているのだろうか――


こんな感じのストーリー。
恋愛ものとしての完成度が異常なまでに高いと思う。
初めに書店で手に取った時は異種族間恋愛が好きな自分的には外せねぇ!って感じで購入したのだが、この本の真に面白い部分はそんなところではない。

この作品には、特に劇的な事件や特殊な人物は登場しない。主人公はどこにでもいる人間で、ヒロインも「どこにでもいる」吸血鬼だ。人間と吸血鬼が昼と夜を分け合う世界、という世界観がすごくしっかり出来ていて、吸血鬼たちも生活のサイクルが違うだけで人間となんら変わらないということがキチンと描けている。

だからこそ人間と吸血鬼の「些細な」違いから戸惑ったり、躊躇したりしてしまう二人の心情にもリアリティがある。相手は自分とほとんど同じ、でも全く同じではない。そんな人間同士でさえ当たり前のことを思い出させてくれる。

全体的にここだ!という盛り上がりもなく、思い返すと平坦にすら感じられる物語だったが文章は読みやすく途中でダレてしまうこともないので全然気にならない。むしろ何も特殊な事件なんて起こらない普通の世界の普通の話だからこそ共感できるし身近に感じられる。

二人の出会いから、互いに惹かれていく過程まで、交互に主人公とヒロインを中心に据えて展開していく中で読者は二人の共通点を見つけたりすれ違いを見つけたり、誰でも経験したことのあるような恋の悩みに思いを馳せる。二人の心情の描写がすごく丁寧で、するすると自分の中に入ってくる。本当この文章力には感服する。

特別じゃない二人の、特別じゃない恋の話。
だからこそ、それはすごく特別なんだと思う。他人からすれば特別じゃないありふれた恋だって、きっと当事者になってみればたった一つしかない奇跡だ。この小説は、そんな特別じゃない奇跡の話。

ヴァンパイア・サマータイム (ファミ通文庫)

石川博品 / エンターブレイン


# by DLMN | 2013-08-24 17:11 | 読書

最近の映画事情[バットマン]

古い方です。1989年版、ティム・バートン監督作品の方です。
主演はマイケル・キートン。

 最近の映画事情[バットマン]_c0135432_16561798.jpgゴッサムシティは暗黒の時代を迎えていた。街はカール・グリソム(ジャック・パランス)を筆頭とするギャングたちに牛耳られ、市民は次々と街を出て行ってしまう。市政200周年を迎えるこの年にゴッサム市長ボルグ(リー・ウォレス)は、新任の地方検事ハーヴェイ・デント(ビリー・ディー・ウィリアムズ)にグリソム摘発を依頼するも成果が上がらずにいた。
そんな中、いつしか街には謎の蝙蝠男の目撃談が増加し始める。悪党を叩きのめして飛び去っていく蝙蝠男、バットマンこと実業家のブルース・ウェイン(マイケル・キートン)はバットマンの正体を探るカメラマンのヴィッキー・ベール(キム・ベイシンガー)と知り合い、互いに惹かれていく。
一方グリソムの一番の部下であったジャック・ネーピア(ジャック・ニコルソン)はグリソムの愛人に手を出したことがバレ、罠にハメられる。組織と繋がりを持つアクシス科学に残る書類を処分するよう命令されたジャックが工場に向かうとすぐに警察に包囲され、更にそこにバットマンが現れる。バットマンとの戦闘の末、ジャックは廃棄された薬品の中に転落してしまう。
ジャックが死に、グリソム摘発も間近かと思われたが、ジャックは生きていた。薬品に漂白され真っ白な肌と引きつった笑顔という姿になってしまったジャックは発狂し、これまでの名前を捨て「ジョーカー」を名乗って街を更なる恐怖へと陥れる。
ブルースは自分が生み出してしまった狂気の道化師を倒すためにバットスーツを着込むのだった……


という話。自分で書いててあらすじ長いなーw
ゲームのアーカムアサイラムから興味を持って、最近バットマンブームが自分の中で吹き荒れているので見てみたんですが、いやーさすがティム・バートンですな。世界観のダークさが半端ねーっす。
とはいえバットマンが不殺の信念を特に持ってないとこがちょっと気になったりはしましたが。ジョーカーを殺したくても殺せないジレンマが好きなんだけどなー

ジャック・ニコルソンのジョーカーいいなぁ。美術館襲撃はシーザー・ロメロ版の方が好きだったけど、まぁあれとは方向性違うしねw 200周年記念祭のパレードとかは本当に派手好きのジョーカーらしくて良かったし、バットマンとの対決で殴られて口から血を流しているにもかかわらず入れ歯を吹いたり「眼鏡をかけた相手を殴るのか?」と眼鏡をかけてみせたりと普通に弱いにもかかわらず常に余裕と笑いを忘れないジョーカーらしさがすげー好きだった。

マイケル・キートンは随分ナヨっとしたブルース・ウェインだったなw 変人の実業家というところではわからなくもなかったけど、アメコミのガチムチ具合とは似ても似つかないよねw 別に嫌いじゃないけど。

本筋とは関係ないけどビリー・ディー・ウィリアムズ出てて笑ってしまったw つーかデント検事って後のトゥーフェイスでしょ?あの人白人だったはずなんだがなぜウィリアムズに白羽の矢が立ったのかw

やっぱバートンの世界観とニコルソンのジョーカーが最高だったわー。
# by DLMN | 2013-08-23 17:32 | 映画

お気に入りのエロゲベスト、の続き

ちょっと前に書いたエロゲベスト10の続き、というかランキングに入らなかった作品の紹介を……。ランキング漏れというとアレだけど、正直5位以下はまぁ甲乙つけがたいものが多かったので前回のランキングの一部と思ってもらえればいいかなーと。今回、多少R-18な部分あるかも。

英雄*戦姫
 お気に入りのエロゲベスト、の続き_c0135432_1474838.jpg発売前にも少しここに書いたような気もしますが、期待を裏切らない良作でした。今度PS3とPSVitaでも移植版が出るとか。歴史上の偉人を女の子にして戦わせる、というのは今やありふれた作品といってもいいでしょうが、この作品のゲーム性やシナリオは既存の歴史英雄ものとはちょっと違います。偉人を下地にしてはいますが、あくまでもパラレルワールドであることがポイントです。正史の偉人そのままのキャラクターでなくては納得できない、という人には物足りないかもしれませんけど、でも有名なエピソードに沿った「らしさ」はあるし、色んな時代の英雄が一堂に会するというのも新鮮だと思います。時代はバラバラなので歴史に沿ったシナリオではありませんが、パラレルワールドという設定を生かしたシナリオで文章量もあります。ゲームとしても随分楽しめましたが、人数が多いゲームの宿命であるところのヒロインごとの見せ場が少ないというのが唯一のマイナス。Hシーンはないまでも、終盤から登場のヒロインたちにはイベントが2、3回しかないキャラもいてせっかく可愛いのに勿体無いなーと。原画が僕の大好きな大槍葦人氏であるのも重要なポイントですけどねw

体育倉庫物語
 お気に入りのエロゲベスト、の続き_c0135432_14581028.jpgただのハーフプライスの抜きゲーと思うなかれ。もちろんロリが好きなら全然抜ける抜きゲーとしても優秀作ですけど、ライターの西矢沙広さんは僕がこの作品で好きになった人です。勿論抜きゲーではあるんですが、ラストの展開の素晴らしさといったらないです。臨時採用の宿直教員と休みの学校に忍び込んだ二人の少女の秘め事、ってなストーリーですが、最後ほんとに泣けるんですよ。主人公がヒロインの一人をおんぶしていくところ、泣きました。この手のハーフプライス抜きゲーであんなに泣いたのはあとにも先にもこれだけだと思います。ロリコン垂涎、ぜひお試しを(笑)


今回は以上の二作。まだ紹介したいのはあるんですけど。
よかったら買ってプレイしてみてください。
# by DLMN | 2013-08-13 15:17 | ゲーム