【第五回】映画「バットマン」のヴィランたち

ちょっと間があいてしまった…第五回である。
ということで今回からノーラン監督のバットマンリブート「ダークナイト」三部作に入っていきます。
まずは「バットマン ビギンズ」。

・ラーズ・アル・グール(渡辺謙/リーアム・ニーソン)
 /バットマン ビギンズ - 2005年
c0135432_22022233.jpgc0135432_22042087.jpg渡辺謙が影武者を、リーアム・ニーソンが本物をそれぞれ演じた「ビギンズ」のメインヴィラン、ラーズ・アル・グール。
映画での設定は世界の秩序の復活を目的とするテロ組織「影の同盟」の首魁で、訓練された忍者のような部隊を操る。渡辺謙演じた影武者の背後で本物のラーズ・アル・グールとしてリーアム・ニーソンが暗躍しているという設定。
リーアム・ニーソンの正体が明かされるまでは彼は「ヘンリー・デュカード」を名乗り、バットマンになる以前のブルース・ウェインを同盟の一員として指導していた。
なかなかに映画独特の味付けが加えられた設定で原作とは多くの面で趣が異なる。
テロ組織を率いる首魁である点こそ原作通りだが、その目的からしてすでに原作とは異なる。
原作のラーズは「地球環境の調和」を目的とし、そのために邪魔な存在である人類の殺戮を計画する非常に規模の大きな犯罪を行う人物であり、秘泉ラザラス・ピットの力で数世紀を生き抜いた不死身の魔人。
しかし映画ではあくまでも目的が「人類の」秩序の復活であったり、影武者を使うことで不死を「演出」していたり、人間の悪党である。
まぁぶっちゃけた話ラーズ・アル・グールについては原作もよく知らないので(こら!)イメージや雰囲気の点ではなんとも評価しにくいのだが、渡辺謙もリーアム・ニーソンもなかなか印象深く怪しげな雰囲気が出ているとは思うが、設定があくまでも人間的な動機や人物になってしまったせいでバットマンヴィランらしい特色が薄れ、やってることはただのテロじゃないかという状態になってしまったことは見過ごせない。バットマンリブート一作目の悪役としては人間的過ぎるのではないだろうか。

・スケアクロウ(キリアン・マーフィー)
 /バットマン ビギンズ - 2005年
c0135432_22250005.jpgキリアン・マーフィー演じた恐怖の案山子、スケアクロウ。三部作の各続編にも端役程度だが登場しダークナイト三部作で皆勤賞を果たす。
映画での設定はマフィアと結託し犯罪者を使った実験を繰り返すアーカム・アサイラムの精神科医ジョナサン・クレインが、自分を脅迫しようとしたマフィアのボスに対し「恐怖ガス」を使った時を境に案山子のマスクを着用しスケアクロウとなった。ラーズ・アル・グール率いる影の同盟の要請でゴッサムの下水道に密かに恐怖ガスを混入させていた。
初見で案山子マスクのクオリティの高さに狂喜乱舞したキャラクター。キリアン・マーフィーの演技も非常に狂気的で、恐怖を操る怪人として素晴らしいと思う。
恐らく設定に関しては原作コミックスの一部で使われている元精神科医という設定を流用したのだろう。精神科医から犯罪者へという意味ではハーレィ・クィンに近い立ち位置ではあるが、ジョーカーに狂わされたハーレィとは異なり幼少から青春期の出来事に起因して狂気に走ったジョナサンを上手く形にしている。
恐怖ガスの力を過信し肝心なところでバットマンを出し抜けないというあたりも個人的に非常にスケアクロウらしいと思う。
事件解決後、逮捕されず行方不明になるあたりも手におえない狂気的医師ジョナサン/スケアクロウとして非常によろしい。そんなこんなで個人的にかなり好ましいスケアクロウの造形となっている。
強いて言うならばもっとしつこいくらいバットマンに絡んでもよかったのかな、と思わなくもないのだがサブヴィランとしては十分すぎる活躍を見せてくれた。

そんなわけで「ビギンズ」の二人のヴィランを紹介しました。実はザズーさんも出ているには出ているのですがあまりにもちょい役なうえ原作とは程遠いビジュアルで名前以外別人だったので割愛。
次回はついに三人のジョーカー最後の一人が登場、になるのかな? 未定だが。

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# by DLMN | 2014-05-16 22:50

【第四回】映画「バットマン」のヴィランたち

というわけでちょっと間はあいたけど「バットマン オリジナル・ムービー」見たよ。
まぁTwitter見ればわかることだけどバットマン見なきゃと言いつつ「フィリップ、きみを愛してる」に浮気したりしてたので遅くなっちった☆てへへ。
「フィリップ、きみを愛してる」良かったよ。バットマン関係ないけどね。あ、でも「フォーエヴァー」でリドラーを演じたジム・キャリー主演だよ。よかったら見てね!

さて、では「オリジナル・ムービー」の悪役について書いていくよー。
今回は作品の方向性的にここがいいここが違うってやるのはちょっと違う気がしたのでほとんど単なる感想文だよ! あれ? いつも通りと言えばいつも通りだったね!

・ジョーカー(シーザー・ロメロ)
 /バットマン オリジナル・ムービー - 1966年
c0135432_15484467.gif三人のジョーカーの初代、シーザー・ロメロ演じた実写映画初のジョーカー。
テレビシリーズ含め、このバットマンシリーズはコメディ路線の作品なのでもちろんジョーカーにもダークさは皆無だが、それでもジョーカーというキャラクターが死んでいないのはロメロがきちんとコメディの中に狂気を潜ませているからだろう。
といってもそれは「ダークナイト」のような得体の知れなさというか、鬼気迫る危険な狂気ではなく悪趣味で理解しがたい道化的な狂気だが。
コミカルな動作やセリフの節々にジョーカーらしい悪趣味さが出ていて、ただの笑える道化ではないことが演技から伝わってくる。面白いやつだがどこか気味が悪い、愉快な男だが理解しがたい。ある意味もっともジョーカーの本質を捉えたキャラクターになっているのかもしれない。

・ペンギン(バージェス・メレディス)
 /バットマン オリジナル・ムービー - 1966年
c0135432_16055921.gifバージェス・メレディス演じたペンギンはコミカルながら原作の小柄な悪党の特徴を非常にうまく形にしている。
この映画版では他の悪役よりも単独行動で目立つ機会が多く、一番積極的にバットマンを倒そうとする悪役だが、その計画がことごとくバットマンに阻止され(あるいは見破られ)、仲間であるはずのジョーカーたちからは馬鹿にされている。
キャットウーマンやリドラーに馬鹿にされては憤慨し、頭をひねって作戦を立て、それでも全く信用されていない。自己顕示欲の強い、それでいてなかなか他者から認められないペンギンの不満を上手く表している。
また彼のメインウェポンである傘の扱いの上手さも「リターンズ」のペンギン以上のものがある。「ペンギン・ガス」なる催眠ガスを先端から噴射している傘を放り投げて守衛を眠らせたり、傘型の飛行物体(あれ何て呼べばいいかわからんw)を乗り回したり、戦闘でも傘を武器としてサーベルのように使う姿は原作のペンギンをうまく実写に落とし込んでいる。その外見もキャラクターも、非常に上手く実写化しているといえよう。

・ナゾラー(フランク・ゴーシン)
 /バットマン オリジナル・ムービー - 1966年
c0135432_16182132.jpgナゾラー(邦訳の名前。英語では原作通りリドラー)を演じたのはフランク・ゴーシン。緑の全身タイツの怪人を最初に演じたのが彼である。
「フォーエヴァー」のリドラーを見ているとこのゴーシンのリドラーが原型なんじゃないかな、と思える部分もちらほらあったりなかったり。
バットマンにナゾナゾを仕掛けることを「至上の快楽」だと言って執着し、バットマンにヒントを与えることも厭わず、ジョーカーの制止を振り切ってまでナゾナゾを仕掛けようとする「バットマンへの執着」「ナゾナゾへの執着」がよく出ている。
また作中一番表立ってペンギンを非難するのもこのリドラーであり、計画が失敗するたびペンギンの計画の杜撰さを指摘している。
ペンギンだけでなくジョーカーやキャットウーマンも信用していない一方で彼ら全員を組み込んだ作戦を立案するなど、メンバーきっての知能犯ぶりを見せているあたりもリドラーらしいといえる。
まぁ、知能犯と言っても実質やってることはペンギンと同レベルなんだけどね…作品の性質上突っ込むべきじゃない部分だとは思うけど、リドラーの計画としてはちょっと穴だらけな気もした。バットマンとロビンも同じくらいポンコツなのである意味彼らのレベルでは非常に高度な作戦だった気もする。

・ミス・キャット(リー・メリウェザー)
 /バットマン オリジナル・ムービー - 1966年
c0135432_16400939.jpgリー・メリウェザーが演じたミス・キャットことキャットウーマン。本作の悪党でありヒロインでもある。
本作の悪役たちはどういうわけかゴッサムを飛び出して世界征服を企むわけだが、その目的が一番似合わないのは彼女かもしれない。
まぁおそらくは人気の悪役として、紅一点の女性枠として登場させざるを得なかったのだろうことを考えると仕方ないことではあるのだろうが。
基本的にはコソ泥であり自分の快楽に正直な野良猫であるキャットウーマンが世界征服を企むだろうかという疑問はある。
とはいえその点を除けば原作の悪女キャットウーマンのポジションに相応しいキャラクターになっていると思う。ブルースが一方的に彼女に惚れてしまっているのがその最たるもので、原作でも悪党とわかっていながらバットマンがいつも決定的な部分でためらってしまう妖しい魅力の持ち主がいい具合に実写で描かれている。
加えて動作やセリフの一つ一つが猫の動きや声を取り込んだものである点も好評価をつけていいのではないだろうか。


こんな感じでどうかねー。基本的に初期の原作の雰囲気をそのまま映画にしたという意味でかなりよくできた映画だったと思う。チープな作りではあるが、それもまたコミカルな雰囲気の演出にいい役割を果たしていると思うので不満はない。ぜひ一度見てほしい作品だ。

さて次回からはダークナイト三部作に入る、かな? わかんね。
「ビギンズ」とか若干うろ覚えなんだよな…もっかい見てから書こうかな…

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# by DLMN | 2014-05-10 16:54 | 映画

【第三回】映画「バットマン」のヴィランたち

第三回だよー。

さて三回目の今回は映画バットマンシリーズの問題児こと「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲」の悪役について話していこう。
前作「フォーエバー」以上に明るい作風、再びのキャスト変更で作られたバットマンアンソロジーのラストにあたる作品。企画されていた5作目が本作の不評によって企画ごと消滅したという問題児である。

映画自体はまぁ前作同様嫌いではないかなぁとは思うものの。前作にはまだ名残が感じられた一作目二作目のダークな雰囲気が完全に消え失せていたり、記事で触れていくように悪役が生かし切れていない感じがしたり、あまりにもCG頼みでセットの作りが雑だったり、気になるところがたくさんある。初っ端博物館を襲撃したフリーズの氷のセットがあまりにもチープすぎていきなりテンション下がる。一作目二作目の画面に映る景色が良くできていたから余計に気になる。残念な出来と言わざるを得ないなぁ。

・Mr.フリーズ(アーノルド・シュワルツェネッガー)
 /バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲 - 1997年
c0135432_22325281.jpg言わずと知れたアクション界の大物俳優シュワルツェネッガーが演じたのは氷点下の怪人Mr.フリーズ。
映画での設定は難病の妻を冷凍保存し、その治療法の研究中の事故で氷点下でしか生きられない体質になってしまった人物。冷凍スーツの出力にダイヤモンドを必要とするあたりも含めてまぁ概ね原作通りのキャラクターだと思う。
ただ、登場した瞬間にあちゃー、と思うのは彼のデザインだ。
ゴツゴツテカテカし過ぎじゃね?の割には動き軽いし、つーかそのスーツ顔出ちゃってね?思いっきり外気にさらされちゃってるけど大丈夫なの?氷点下維持できてんの?
一応スーツを脱いだフリーズが常温に耐えられない様子は映画の中でも描写されているのだが、その割にスーツのデザインや彼が途中囚われるアーカムアサイラムの部屋の様子などが設定の割に非常に雑というか、設定にそぐわないように見える。そのせいで絵面に説得力がないし、彼が氷点下でしか生きられない人物というのも疑わしく見えてしまう。
行動原理の全てが妻のためというのは非常にフリーズらしい動機だが、いくら妻を救われたとはいえ最後にあっさりバットマンと和解してしまう点も見過ごせない。
全体の明るい作風を見るに最後の和解は仕方ないのかなぁとは思うものの、基本的にバットマンシリーズの悪役とバットマンは同じような狂気や悲劇性を背負っていながら決して相容れないという関係性が見どころでもあると思うのだが、この映画のラストを見る限りではフリーズは完全に改心しているように思われる。なんというか、薄っぺらな子供向けの悪役みたいなオチだなぁと思わないでもない。
いろんなところで勿体ない、物足りないMr.フリーズだった。

・ポイズン・アイビー(ユマ・サーマン)
 /バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲 - 1997年
c0135432_23143797.jpg植物毒を浴びて変異した植物学者、ポイズン・アイビーことパメラ・アイズリーを演じたのはユマ・サーマン。
映画での設定は植物を偏愛し、植物を守るためなら人類滅亡をも辞さない植物学者・パメラが同僚が自分の研究成果を悪用し金儲けをしていたことを知り、その同僚に浴びせられた植物毒で体質が変化し文字通りの植物人間となった。
原作とは誕生の経緯は異なるものの犯罪行為を働く目的は原作と同様に植物を守るためである。能力も基本的には原作準拠であり、体内で生成したフェロモンで他社を操ったり、唇から毒を分泌してキスした相手を殺すなど原作やアニメ版で見られた能力を見せてくれている。
…にも関わらず、俺にはこのキャラクターがポイズン・アイビーとは思えなかった。理由は一つ。このアイビー、本当に植物が好きなのか…? と思わされる点が多いからだ。
植物を守るためなら人殺しも厭わない、というアイビーのスタイルでは人間<植物であり、アイビーは基本的にどんな理由があっても植物が傷つくことを容認しないと思うのだが…どういうわけかこのアイビーは、フリーズが考案したゴッサムを丸ごと氷漬けにする計画に喜んで加担している。そんなことをすれば現在ゴッサムに生きている植物たちが死ぬのは確実であるのに気に留める様子もない。一応その後に自分の生成した植物を植えて再生するとは言っているが…アイビーは現存する植物を滅ぼしてまで新たな植物を繁栄させたりするだろうか…?
そもそもフリーズに惚れてフリーズの妻の冷凍保存装置を止めたりするなど、植物以外のものに執着する場面も多く、本当に植物偏愛者のアイビーなのかと疑問を抱かざるを得ない部分が多い。
衣装などは非常によくできていると思うのだが、いかんせん思想と行動が矛盾しているように思う。悪役として薄く中途半端な存在になってしまっていると思う。「リターンズ」のキャットウーマンの劣化版のような印象を受けた。

・ベイン(ジープ・スウェンソン)
 /バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲 - 1997年
c0135432_23442208.jpgプロレスラーのジープ・スウェンソンが演じた、らしいのだが作中ではカタコトでしか話せない脳筋野郎な上にほぼずっとマスクをかぶっているのであまり演者は気にならない本作のベイン。
映画での設定は連続殺人鬼だったアントニオ・ディエゴがパメラの同僚の実験に利用され、植物毒から抽出された増強剤「ヴェノム」を注射されて怪力で命令に忠実な戦闘マシーンとなった。
最も原作と異なるキャラクターだと思われるベイン。そもそも原作では読書家で知能犯であるはずのベインがただの脳筋野郎になってしまっているのはどういうわけか。憤りを禁じ得ない。
しかも正直この映画に彼の居場所はないように思う。どういうわけかアイビーに従うボディガードのようなポジションになっているが、フェロモンで他者を操れるアイビーにわざわざこんな屈強なボディガードをつける必然性は物語の中に感じない。非常に薄っぺらな扱いで、人気の悪役を無理やり登場させたような感じがする。
デザインに関してだけは「ダークナイト ライジング」のベインよりも原作寄りのデザインになっていて好きだが、デザインが原作に近いがゆえに脳筋ぶりが余計気に食わないように見えてしまっている気もする。
必然性もなく、原作とはほとんど別物のキャラクターであり、見た目だけは原作に近い。なんとも中途半端でしょーもないキャラクターになってしまったベイン。原作ではバットマンの背骨を折り一時再起不能にするという非常に大きな役割を果たした悪役であるベインがバットマンと一対一の対決シーンもなく(バットマンと戦うシーンはあるがロビンと交互なうえアイビーとの会話にフォーカスされている場面のためベインが目立たない)いかにも使い捨てという感じで終わってしまったのが勿体なくて仕方ない。なぜこんな風にベインを使ったのだろう…。


以上。
せっかくいいポジションの悪役を三人も登場させたにもかかわらず、各々の設定や役割が穴だらけで勿体ない。悪役だけでなく本作で初登場したバットガールもなぜかアルフレッドの姪に変更されていたり(というかアルフレッドの姪っていくらなんでも年齢的に無理がないだろうか)、その彼女がさしたる訓練も積まないままにバットガールとして活躍しアイビーを倒してしまうというトンデモ展開。
Mr.フリーズとアイビーの企み、アルフレッドの病気、バットガールの誕生などいろいろな要素を強引に詰め込みすぎているせいもあり、全部が中途半端で要素が飽和しているように思える。要素の配分を誤った故に酷評される結果になったのではないだろうか。

次回は…実は内容未定だったりw
というのはamazonさんで注文した「バットマン オリジナルムービー」のDVDが届いたので、見る時間があればダークナイト三部作に行く前にオリジナルムービーを扱うかもしれないということで。
ま、誰も見てないからいいか。

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# by DLMN | 2014-05-07 00:08 | 映画

【第二回】映画「バットマン」のヴィランたち

第二回は「バットマン フォーエヴァー」の悪役について。
バットマンシリーズの方向性をファミリー層向けに変え、キャストを一新したジョエル・シュマッカー監督の「フォーエヴァー」。バットマンの悲劇的な過去や狂気的な悪役といったダークな要素は残しつつも、よりファミリー層向けの明るい作風となった。

映画本編については、まぁ嫌いではないけど…って感じ。前作「リターンズ」の悲劇の悪党ペンギンや前々作「バットマン」の互いが互いを生み出してしまった負の連鎖関係にあるバットマンとジョーカーというようなダークなゆえに心躍る作風を離れてしまったのが非常に惜しく感じられる作品。
とはいえ興行的には成功したようなのでこれはこれで当時求められていたバットマン映画の一つではあるのだろうけど。

・トゥーフェイス(トミー・リー・ジョーンズ)
 /バットマン フォーエヴァー - 1995年
c0135432_13223714.jpgトミー・リー・ジョーンズが演じた二面性のカタマリ、トゥーフェイスことハーヴィー・デント。
映画での設定は優秀な地方検事だったデントが、裁判の席で犯罪者によって硫酸を浴びせられて顔に火傷を負い、「運」がすべてを公平に決められるという強迫観念にとらわれ犯罪者となった。このあたりは原作の設定とあまり変わらない。
二面性を持った男トゥーフェイスとしては非常に上手く描かれていたと思う。派手な真っ二つの衣装に始まり、数字の2に関連した犯罪、白と黒の食事、コイントスで決まる行動など二つの真逆の性質を持つ姿はよく描けていた。コインへの執着をバットマンに突かれて敗北するというのも「らしい」最期だ。
反面気になったのは一作目のジョーカーばりの陽気な雰囲気と、バットマンへの恨みの描写の不足という二点。
なぜトゥーフェイスがこれほど愉快なキャラクターになってしまったのか…いやまぁ「ファミリー層向けの明るい作風」に前作のペンギンのような悲劇性はいらなかったのかもしれないが、明るさ担当は後述のリドラー1人に譲ってもよかったのではないかと思わなくもない。
本来は自分やバットマンがいかに悪と戦おうとも結局は自分は顔に大火傷をする羽目になったことで、法や規則よりも「運」こそが公平だと信じるようになってしまった悲しい人物であり、法廷内にいながら自分がこんな姿になるのを助けてくれなかった(実際には間に合わなかった)バットマンを恨んでいるという犯罪の動機もバットマンへの執着も非常に重苦しいキャラクターであるはずのトゥーフェイス。
映画全体の色のために陽気なキャラクターに変更したのはわからなくはないが、彼が運を信じるようになった経緯が簡単にしか説明されなかったり、バットマンを単なる自分の邪魔者として排除したがっているようにすら見える言動はトゥーフェイスという悲劇の犯罪者の最大の魅力を殺しているように思えてならない。

・リドラー(ジム・キャリー)
 /バットマン フォーエヴァー - 1995年
c0135432_13411565.jpgコメディ俳優の大御所、ジム・キャリーが演じた「ナゾの男」リドラー。この男を見事演じきったジム・キャリーの演技力は素晴らしいの一言に尽きる。
映画での設定はウェイン社で働く下っ端研究員のエドワード・ニグマが自身の研究である「BOX(脳波をいじって立体映像を見せる装置)」を倫理的な問題があるとして社長のブルースが認めてくれなかったことを恨み、密かに研究をつづけた副産物として他人の知能を奪う力を手に入れたというキャラクター。
原作では彼が犯罪に走った経緯が詳細に描かれたことはないため、このリドラーの設定は映画オリジナルのものだが、エドワード・ニグマという男としてもリドラーとしても非常によく描かれていると思う。
はじめは狂気的ながらも一般市民だったニグマが、敬愛していたブルースに見放され(まぁあの態度じゃ仕方ないけど)、裏切られたと逆恨みする場面があるが、ジム・キャリーの表情の変化が素晴らしい。一人の研究員の野望に燃える瞳が、尊敬する男に認められなかった絶望に塗り替えられる様子が強烈に伝わってくる。
リドラーとなってからの"?"ステッキの扱いやくねくねしたコミカルな動きも「この」リドラーにはよく似合っているし、前述の通りブルースへの失望からウェイン社とブルースに強い対抗意識を燃やす様子も描けているので悪役としての厚みも上々。
気になる点としては、彼のナゾナゾへの執着があくまでもリドラーになってから身についたように描かれている点。一応ウェイン社の研究員を辞める際にもナゾナゾを残してはいるが、その時点で既に彼はほとんどリドラーである。彼の存在のカギであるナゾナゾへの執着が他人の脳波を吸収した結果生まれた後天的なものであるというのはややインパクトに欠ける気がしないでもない。
また上で「この」リドラーと書いたように、原作通りのキャラかというと微妙であるように思う。個人的にこういうキャラクターは好きだしリドラーに強い思い入れもなかったのでさほど違和感はなかったが、あくまでもこれはジム・キャリー版リドラーであり、バットマンシリーズ本来の彼とはやや趣が異なるように思う。


第二回は以上。
さて、次回はいよいよ問題作「バットマン&ロビン」の悪役に言及していくことになるかな。
フォーエヴァーまでは、決して悪くない出来だったんだけど、ね…。
ではまた次回。

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# by DLMN | 2014-05-04 14:06 | 映画